カシャカシャと音を立てながら泡立て器がボウルの中で踊り続ける。
卵に砂糖、薄力粉とベーキングパウダーが混ざり合い、そこに牛乳が追加されもったりとなればパンケーキの元が完成する。
気分がイイのかプロイセンは鼻歌を歌いながら手慣れた様子でフライパンの準備に取り掛かった。
溶けたバターの匂いが日本の食欲をそそり、きゅるるっとお腹が反応してしまう。
「空腹にこの匂いは反則です」
スーツのジャケットとベストを脱いだだけの状態でエプロンをつけ、自宅のキッチンで料理をするプロイセンの姿は様にやっており格好良くて仕方が無い。
料理をしている真剣な眼差しに加え、プロイセンは斜め後ろに居る日本のことが気になるのかもうちょっと待ってろよな! と嬉しそうに無邪気な笑顔を見せながら気にかけている。
「あぁ、もうっ!」
小声で言いならがこれ以上爺を虜にしてどうするのですか! なんて思っている日本の顔はうっすらと赤い。
日本の肩に止まっている小鳥はぴぴっと心配そうに鳴き、つい大丈夫ですよ、と返事をしてしまう。
日本の自宅でも料理を作ってくれるときはある。主に日本が修羅場に陥ったときに、だが。
けれどこうやって改めて彼が住んでいるドイツの自宅で、彼のテリトリーの中でエプロンをしながら自分のために料理を作ってくれる――というシチュエーションに日本の心臓はずっと激しい鼓動を繰り返していた。
真っ白な楕円形のお皿にはキツネ色に綺麗に焼けたパンケーキが2枚重ねられていた。
ふんわりとしたパンケーキの脇には詰んだばかりのミントの葉が乗せられた甘さ控えめのバニラアイスとベルギーチョコをふんだんに使ったチョコレートアイスが並べられている。
そしてお皿の周りを蜂蜜で出来たラインがぐるりと取り囲む。
わざとくねくねとした動きを付けたラインに添えられるようにラズベリーとストロベリーのジャムがそれぞれハートと音符の形が描かれていた。
プロイセンのパンケーキの上には自分で描いたのか、メイプルシロップで小鳥が描かれ、ジャムたちはスプーンですくったままの形で添えられている。
ナイフとフォークを起用に使ってまずはなにも付けずパンケーキだけを一口。
ふっかふかなパンケーキの口当たりの良さと、良質なバターで焼いた味はシンプルだからこその美味しさをストレートに日本に伝え、つい彼はほにゃりと顔を綻ばせる。
「プロイセン君、プロイセン君美味しいです〜!」
「俺様が作ってんだ、当たり前だろう?」
にんまりと笑みながら、プロイセンは切り分けたパンケーキを日本の目の前に付き出した。
ちょうどメイプルシロップで描かれた小鳥の足跡が描かれている部分を。
視線だけで食えよ、と言われるがままに日本はぱくりとそれを口にする。
蜂蜜とは違うけれど甘く、優しい味が美味しかったのか更に日本の笑みは深くなる。
お返しとばかりに日本はチョコレートアイスとラズベリーのジャムを添えてプロイセンの目の前に差し出した。
恥ずかしいことをしている自覚が出てしまったのか、顔を赤らめて。
「あ〜んってしてくんねぇの?」
悪戯っ子な笑みを湛えたプロイセンは更に日本を煽り――やがて目的を達成させニヤリと笑んだ。
――― END ―――
【 初出:2012/09/13 TwitLonger / 2012/09/27−Pixiv『 甘い甘いパンケーキ 』より 】