今更かもしんねーけど俺はお前が好きだ――そう、ギルベルトは菊に伝えた。
困ったような、諦めたような、今にも泣きそうな表情をたたえながら。
告白された菊は一瞬なんのことを言っているのか分からず「へっ?」と小さな声を上げる。
その直後正しく言葉が脳に届き、菊は顔も、首筋も体すらも瞬時に赤くなった。
唯一の救いは夕日が沈みはじめる時間帯だったことだろうか。
空も、街も、いま二人が居る学校の屋上も、そして二人もみんな、みんな赤く染められている。
「……菊っ」
声を押し殺し、泣きそうな顔のギルベルトが菊の腕を掴み抱き寄せた。
ギルベルトはぎゅうぎゅうと容赦なく菊を捉えた腕に力を込める。離したくないとばかりに力強く。
普段とのスキンシップとやっていることは変わらない。
けれどその力強さと聞こえてくるギルベルトの鼓動の速さが菊に現実だということを教えてくれた。
答えなければ、と思うものの菊自身体が熱くて仕方が無いのだ。
抱き締められ困惑しているからではない。歓喜の感情が血流にのって体中を駆け巡っているのだ。
しかし実際にどう答えればいいのか分からず、菊は困惑してしまう。
ゲームの中の選択肢を答えてもその言葉は菊自身の言葉ではないのだから。
「ギ、ギルベ……ルト君」
腕の力を弱めて下さい! そう菊は言いたかった。
なのにいま、目の前に在る紅色はなんだろうか? そして唇に触れている温かいものはなんだろうか?
幼馴染として小さな頃からスキンシップ過多だったギルベルトと口付けるのはなにも初めてではない。
けれどこういった意味合いで触れたのは初めてで菊の思考はもうパンク寸前だった。
「――な、なんてことするんですかっ!?」
触れるだけの口付けはギルベルトが離れたことで終わりを告げた。
しかし菊は嬉しいやら驚いたやらで彼の胸板を叩き、目尻が熱くなりじんわりと涙がたまってしまった事に気が付いた。
「嫌、か……?」
甘えるような、ねだるような表情をギルベルトはする。その表情に菊が弱いと知りながら。
もう一度同じ台詞を耳元で囁けば菊の体は跳ね上がり、耳を手で抑えたまま後ずさろうとする。
「〜〜っ! ズルいですよ! 嫌いな訳ないじゃないですかっ!!」
菊は叫び、ふーふーと肩で息をしながらキッとギルベルトを見上げた。
好きだと言う言葉は口から出ようとせず菊は腹をくくった。
ギルベルトのシャツの胸元を両手で掴み、引き寄せめいいっぱいつま先立ちをする。
やっと届いた場所に先ほどやられた仕返しも兼ねて同じように口付けた。
二度目の口付けの意味を悟ったギルベルトは目を大きく見開き、菊の腰に腕を回しホールドする。
好きだ、好きだ。菊が好きだ。と呪文のように唱えながら、リップ音を響かせて幾度と無く唇を盗み合って。
夕日が沈み空は菊の髪のような色へと姿を変えた。
つい先程まで夢中で口付けし合った二人は互いの顔がまとも見れず恥ずかしくなっていた。
それでもしっかりと互いの指を絡めるように手を繋ぎ、暫くしてから同時に帰ろう――と口にして。
――― END ―――
【 初出:2012/09/12 TwitLonger / 2012/09/24−Pixiv『 学パロで初々しいぷにち 』より 】
【リクエスト内容:告られる→びっくりしておもわず抱きしめる→捕獲してる間に返事をまとめようとする→無理だった!→とりあえずキスしてしまえ! そんなテンパる両想いぷにち】