140字SSりくえすと編―10



●カチコチと時計の針が音を出す。向かい合い正座しながら日本はプロイセンから発せられる言葉を待っていた。結婚する前に伝えたいことがあるんだ、と言われて。幸せにするなんて簡単に言えねぇ。けど、一緒に幸せになるために努力してくんねぇか? 真摯な表情のまま日本の手を取りプロイセンは言う。

●湧き上がる歓喜の感情に日本はぱらりと涙を零した。そして嗚咽混じりになに当たり前のことを言うんですか! 私は最初からそのつもりでしたよ!! と勢い良くプロイセンに抱きついたまま言い切った。一瞬だけ驚いた気配を伺わせたプロイセンは日本を抱き締め、嬉しそうに日本語で愛の言葉を囁いた。

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●逞しいプロイセンの背に体を預けながら日本は肩口に顔を埋めていた。足を捻り、鼻緒が切れてしまった日本をプロイセンがおぶされ、と言ってきたのだ。嫌ならお姫様抱っこにしてやるぜ? なんて半ば強引に我を通されて。顔を赤らめながら落とさないで下さいね、と念を押しながら羞恥心と戦っていた。

●改めてプロイセンの身長の高さに驚愕しながら、見慣れた帰り道がいつもと違って見えることが面白くてついついきょろきょろと周りを見てしまう。興奮している日本のことをしっかり気づいていたプロイセンは日本に気が付かれないようほくそ笑みながらたまにはこんな日も悪くねーな、なんて思っていた。

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●口付けて掌で、指先で触れる度に日本の体が火照り、声が甘くなる。それがプロイセンにとってどれほど威力があるのか本人は知らないだろうし知らせようとまだ思わない。まだ最後までやってはいないとはいえ、最初の頃よりもだいぶ感度は上がった。より素直に快楽を貪るようになった恋人を眺め、笑む。

●最後まですることを考えれば嫌でも日本の体には負担がかかってしまう。愛し合いたいからこそ、プロイセンは日本の体を作り替えてゆく。より貪欲に快楽に浸れるように。体だけでなく心すら満たされて欲しいと願ってプロイセンは己の怒張し痛みを訴えるモノを無視し、今日も恋人の体に触れてゆく――。

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●不意に訪れた沈黙を受けて、改めて日本はプロイセンを盗み見た。眼鏡をかけて分厚いの本を読みながら真剣な眼差しを湛えた彼に日本はつい心が揺れ動く。自分にその表情を向けて欲しいと願い、心が締め付けられる。いつも邪魔しないで下さいと窘めるのは自分の役目だったことを思い出しため息をつく。

●プロイセンはちらりと日本を盗み見て気が付かれないようにほくそ笑む。うっすらと朱に染まり始めた頬と日本から発せられる気配が先ほどとは違うからだ。ほんと好きだよな、とプロイセンと思いながら幾度となく読み終えた本へ再び視線を投げかける。今日は自分から誘わない――とプロイセンは決めて。

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●重なりあう視線がもしかしたら――と希望を持ってしまう。意図はないはずだ、とどんなに自分自身に言い聞かせても、心が求めてしまう。見つめられる視線の中に好意という感情が見え隠れし、それの意味がもっと別の熱を含んだもののように見えてしまい、ため息をつく。プロイセンと日本が同時に――。

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●向かい合ったまま座り、いつもより深い場所で果てられ日本はぶるりと体を揺らす。熱のこもったため息をつきながらプロイセンは放心していた。久しぶりのせいか、それともまたぎりぎりまで我慢していたせいかは分からない。ただその表情が日本の心を刺激し鳴りを潜めていた感情が鎌首をもたげ初めて。

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【 初出:2012/10/31−Pixiv『 140字SSりくえすと編―10 』より 】
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