●感情に任せたままプロイセンは拳槌で壁を殴った。日本と逢う予定だった予定を急遽キャンセルさせられ他の部署の尻拭いをさせられているのだ。それも缶詰のまま一週間も。しかも連絡すら取れずただただプロイセンに苛立ちだけが積もってゆく。書類から視線を外し空を見上げながら逢いてぇ、と呟いて。
●予定がキャンセルになってしまいまして、なんて口にした過去の自分を日本は呪いたくて仕方がなかった。これ幸いにと日本へ仕事を割り振られ、てんてこ舞いになってしまった。一応メールで送っておいたもののあちらも忙しいようで返信はなく、ただ逢いたいという気持ちだけが助長され、胸に蓄積する。
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●珍しく降り積もった雪を見てプロイセンははしゃぎ、雪遊びに興じた。その結果が縁側でお盆に乗せられている雪うさぎと小さな雪だるまだ。ときおりこうして子供のようにはしゃぐプロイセンを見ながらつい日本は笑みが零れてしまう。可愛い、と言ったら怒られるのが分かっているから言葉にはしないが。
●とたとたとプロイセン特有の足音がし、障子が開かれた。乾かさずにここまで来たのか彼の髪からは水滴が落ち肩にかけてあるタオルに吸われてゆく。部屋の中へ入った時にちらりと見えた黒いパンツに送り主である日本は笑みを浮かべる。珍しく熱燗をリクエストしたプロイセンに誘われるまま呑み始めて。
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●白い毛並みに紅い目の猫を見せられ日本は本当にそっくりですね、と感嘆の溜息をつく。たまと初めてあったばかりのその猫はたまを気に入ったのか互いの鼻をくっつけあい、おでこをコツンと軽くぶつけた。にゃーと一鳴きしたまの毛づくろいを始めた猫を見てプロイセンはにんまりと悪い笑みを浮かべた。
●可愛い可愛いと言いながらデジカメで撮影をし続ける日本の腰をがしりと掴み、そのまま俵担ぎの要領で肩に乗せ、猫たちが戯れていた部屋から離れてゆく。その間ずっと日本からはプロイセンは文句の言葉を浴びせ続けられていた。寝室の床の上に下ろし、押し倒して毛繕い俺様もしてやるよ――と囁いた。
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●いつもプロイセン君ばかりに来て貰うのは忍びないですから、となんとか一週間の特別休暇をもぎ取った日本はドイツを訪れていた。折しも季節は冬に差し掛かったばかりだった。防寒着をしっかりと着こみ二人は観光名所を巡るのではなく普段プロイセンが出歩いている界隈をなんと気なしに散歩していた。
●美味しい食べ物だったり新しく変わったお店だったり。いつもプロイセンが見てる日常を堪能しながら二人は手を繋ぎながら歩く。そんな時だ。ヴェーと聞き慣れた声がし、二人共可愛いイヤカフ付けてるんだねー! わードイツドイツお揃いだよー! いいな〜などと囃し立てられ、顔を赤らめてしまった。
●イタリアは小さな声でドイツだけに聞こえるようにこっそりと言葉を漏らした。自然と二人共恋人繋ぎしてたよね、さっき。なんかいいねーと。ドイツはドイツで兄であるプロイセンと日本がおろおろしているのを見ながらふっと表情を和らげ笑みをこぼした。幸せでいてくれるのがなによりも嬉しくて――。
●そして直ぐにイタリアと共に目的地へと出向くためその場を後にする。邪魔して悪かった、兄さんとちょっと困った顔を浮かべながら。ドイツとイタリアの二人が居なくなっても気恥ずかしさは消えない。けれど指を絡め合って繋がれていた手は決して離されることはなく、逆に互いを力強く握り返していた。
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【 初出:2012/09/21−Pixiv『 140字SSりくえすと編―07 』より 】
【 文章リクエスト受付ったー(http://shindanmaker.com/49500)さんの診断結果参照 】