140字SSりくえすと編―06



●大学の文化祭の企画として司会を任されてしまったギルベルトは内心ふてくされていた。はめた悪友どもは既に制裁済みだが、それでも気は腫れない。なにより、ずっと片思いしている相手がこの企画に参加しているのだ。それも複数の好意の視線を受ける様を間近で見なければならないというおまけ付きで。

●外見の派手さとは裏腹に真面目なギルベルトは任されたからには役目を全うせねば、と自らピエロになることを覚悟し懸命に開場を盛り上げ続けた。そして片思いの相手が好意を寄せる相手へ告白するように促す番になった。心のなかで泣きながらそれでもギルベルトは幸せになりやがれ! と、叫びながら。

●ギルベルトにはなぜ自分の目の前に片思いの相手――本田菊――が居るのか分からなかった。この場に居る好きな人に告白しないとダメだぜ? なんてニヒルな男を装いながら心臓は激しく動き続けていた。俯いていた顔が上げられ、意を決したように顔を赤く染めながら本田はギルベルトへと言葉を伝えた。

●ずっと貴男のことが好きでした、と切なそうに、諦めている眼差しで。その瞬間この企画の本当の意味をギルベルトは知った。両想いだと知っていたフランシスとアントーニョがこの企画を考案し立ち上げたのだ。同時に本田も準備要員として参加を義務付けてこの企画から逃げられないように手配して――。

●確かに驚いた。まさか想い人に告白されるとは思っても居なかったから。いつも残念なイケメンと称されていたことにも起因するが。そんなギルベルトだったがマイクを持たない手で本田の腕を掴み、そのまま言葉を紡いだ。「俺様は今でもお前の事が大好きなんだっ!」とマイクを持ったまま見事に叫んで。

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●秋も深まった夜。どこからともなく聞こえてくる虫の音を聞きながらプロイセンは満足そうに笑いながら腕の中に捉えた恋人を十分に撫で回す。つい先程までばたばたと月見の準備のために慌ただしく準備をし、プロイセンの横に腰掛けようとした日本の腕を掴んで引き寄せて。逃げられないようにがっちり。

●隠れていた月が雲から顔を出せば日本の口からほうっと感嘆の溜息がこぼれた。きらきらとした眼差しで月を見上げる日本はいつも以上に可愛く見えて仕方が無い。けれど、月ばっかりに気を取られるのも癪なので日本の耳元でわざと懐かしい言葉を放った。――月が綺麗ですね、と低く睦言を匂わす声色で。

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●見た目は子供、頭脳は大人――なんていう某フレーズの作品を思い出しながら日本は口元を着物で隠しながらにやにやと笑いが止まらない。酒を飲み気分が良くなったらしいイギリスが「ほあた!」という台詞と共に、星型のステッキを振りかざした先に運悪くプロイセンがひょっこりと現れてしまったのだ。

●ぼんっ! なんて音を立てながら煙が消え去った場所には見事に子供の姿になったプロイセンが。幸いプロイセン自身には記憶がしっかりとあったために事なきを得て――一悶着はあったが――いまは大人しく買ってきて貰った子供服を着て日本の隣に腰掛けふてくされながらオレンジジュースを飲んでいる。

●そんな姿が愛らしくて日本はついプロイセンの頭を撫で始める。にこにこと上機嫌のまま。プロイセン自身としては子供扱いされたくないのが心情だが、喜んでいる表情を見るとたまにはいいか、とついほだされてしまう。密かに元に戻れるまで子供らしく目一杯甘えて、日本を振り回そうなんて思いながら。

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【 初出:2012/09/18−Pixiv『 140字SSりくえすと編―06 』より 】
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