●朝、ベットの上でプロイセンに捕獲されながら日本はジタバタともがく。ただ体力を消費するだけであったとしても未だに慣れないのだ。情事の翌朝の空気に。だから逃げようとするのだがなぜか毎回プロイセンはそんな日本に気が付き逃げないように羽交い絞めにしたり抱き寄せたりして日本を眺めている。
●しかしプロイセン自身は慣れろ、とは言わない。ただ無言のままやたらめったらに甘い笑みを浮かべながら日本の髪を撫でたりするだけなのだ。それが一番日本にとって居たたまれないと分かって居るのにもかかわらず止めてくれないのだから質が悪い。この現状を打破するために日本は彼の額へと口付けて。
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●はぁ、とつい菊はため息をつきながら階段を降り始めた。惰性的に体を動かしながら新たなプロジェクトを任され、同時に他の部署のやり手と称される人物と共にプロジェクトを進めなければならないことが菊の心を重たくさせる。どちらかと言えば人見知りであり、他者と行動を共にするのは好きではない。
●どんよりとした気分のまま不意に憧れている名も知らぬ人の顔が脳裏に浮かび慌てて消し去ろうと頭を左右に振った。その瞬間ずるりと階段を踏み外してしまい前のめりのまま落ちそうなった瞬間、あっぶねーなぁ〜と言うぶっきらぼうな言葉が聞こえ、ばくばくと心臓が鳴り続けるまま菊は顔を上げ驚いた。
●それもそうだ。密かに憧れていた人物に助けられ、なおかつ菊が顔を上げた瞬間互いの唇が微かに触れ合ってしまったのだから。思わず叫びそうになる菊に気が付いたのか、とっさにその人物は自分の胸元に菊の顔を押し込めただの事故だ。俺様も気にしねぇからお前も気にすんじゃねーぞ? と、囁かれて。
●分かったか? なんて更に囁かれてしまえば菊はもう無言で頷くしかなかった。頭の中はもうパニックで嬉しいやら恥ずかしいやらこんな出会いはしたくなかった! と思うやらで忙しかったから気が付かなかった。憧れの人物が顔を赤くしたまま、俺様は忘れられそうにねーけどな――と呟いていたことに。
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●布団の上で胡座をかいたプロイセンの膝の上に乗り、彼の肩口に顔を埋めながらぎゅうっと力いっぱい抱きつく。日が昇ればプロイセンはドイツへと帰国してしまう。夏場の夏期休暇を利用してこの時期は一ヶ月以上日本の家に居てくれる。毎年のことだとしてもやはり別れは寂しくて離れがたくて仕方ない。
●プロイセンとて同じ事を思っているのか日本を抱きしめる力はいつもよりも強く、二人を隔てる隙間すらない。愛し、気持ちを交わせている最中にこぼれた日本の涙は下に居たプロイセンの目元に落ちて彼自身が泣いているように見えてしまい嗚咽が上がる。無言で繋がったまま、けれど確かに心を交わして。
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●無い物ねだりだと分かっていても欲さずには居られなかった。例え、法的になんの効果も意味も成さないと分かっていても――それでもプロイセンと日本は挙式を上げることを選んだ。たくさんたくさん互いに話し合って納得の行く結婚式をあげよう、と。木々が生い茂る小さな森の境界で、内輪だけの式を。
●挙式をあげようと決めたあとプロイセンは人としてお前に誓いたい――という言葉を受けて場所は教会ではあるけれど人前式となった。そして今しがた指輪の交換をし、近いのキスを周りに囃し立てられている。恥ずかしさで顔を俯く日本にほくそ笑みながら諦めろ、と囁き顎を掴んで上を向かせ唇を盗んだ。
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【 初出:2012/09/15−Pixiv『 140字SSりくえすと編―05 』より 】
【 文章リクエスト受付ったー(http://shindanmaker.com/49500)さんの診断結果参照 】