140字SSまとめログ―06



●普段からあまり表情が変わらない、分かりづらいと言われている日本だがプロイセンからすればこんなにも分かりやすい奴は居ないぞ? と思う。現にプロイセンが手土産に持ってきたものを見て日本は目を輝かせ、嬉しそうに頬を赤く染めているのだから。見たかった表情が見れてプロイセンはほくそ笑む。

●近所の老夫婦から教えて頂いた手土産――水羊羹――は桐箱に収められ見るからに高級感を漂わせている。教えて頂いた老夫婦からの言付けをそのまま伝えれば確かにそうですね、と日本は納得し和菓子切りではなく木の匙を用意した。匙ですくい一口二口と食べるごとに日本の顔は幸福感で満たされていた。

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●着てみてぇ――その言葉を鵜呑みにし、菊は予備である赤襦袢をギルベルトに渡し後悔した。菊よりも白い素肌の男が赤襦袢を着こみ目を伏せ、煙管を吸いながら月を見上げる。なんと様になることか。情事のあとということもあって否が応にもギルベルトからは色香が漂い、菊を誘い込む。にやりと笑んで。

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●ギルベルトという男はとても異質な存在として皆の目に映る。白髪に近い銀髪と紅い眼。そして纏う雰囲気が人のものとは思えなくしていた。けれそそんな彼で良いと菊は思う。面白いとも可笑しいとも。びしょ濡れのまま店に来たギルベルトにほんの少し悪態を付いて、そして菊は甲斐甲斐しく世話をやく。

●ぽたりぽたりと歩く度に水滴を床へ落としながらギルベルトは歩きなれた廊下を進む。いつもの部屋にたどり着き手ぬぐいで水滴を拭おうとする菊の腰を抱き寄せ荒々しく唇を塞いだ。いつもなら熱いくらいに感じるギルベルトの手がひやりとするほど冷たく、菊はゾクリとした感覚が背中を走り抜けてゆく。

●燃え上がるような紅い眼はやけに飢え、ただただ菊を欲していた。口付けは更に菊の舌を絡めとり離すまいとより長くより深くさせた。息も絶え絶えになったころ赤襦袢を脱がされ、布団の上に押し倒される。いつもと違うギルベルトを見上げれば口付けによって色艶を増した唇をぺろりと舐め妖艶に笑んだ。

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●気が付いた時には既に手遅れだった。開花間近の、それこそ綻び始めようとする恋心を気が付かれないようにひた隠しにしたくて。結果、日本はプロイセンと距離を置こうと努めてが叶わなかった。逆に癇に障ったのか紅い目が日本を捉えて離さない。あの紅い目が訴えかけるのだ。逃がさない――と頑なに。

●プロイセンが気配を消していたせいで対応が遅れ、日本はあっさりとプロイセンと壁の間に捉えられた。ダンッ! と音を立てながら両手を日本の顔の脇につかせた。俯く日本に顔を近づけプロイセンは言う。自覚したお前を逃がすほど俺様は甘くは無いぜ? と、低く掠れた声で日本の脳を揺さぶりながら。

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●甘ったるい吐息と共に囁かれた日本は力なくその場にへたり込みそうになった。咄嗟にプロイセンが抱きしめてくれたお陰で床に座り込むことは回避されたが、日本にとって現状は悪化の一途を辿る。己を恥、情けなく思いながら潤んだ目のまま見上げれば見惚れてしまうほど真摯な表情のプロイセンがいた。

●プロイセンはあえて日本の名を呼んだ。国ではなく、個としての話だと暗に込めて。けれど日本はついぴくりと体を跳ねさせてしまう。日本の動揺具合にほくそ笑みながら今度は怖がらせない様に、心のままに言葉にした。世間一般でいう愛の言葉というものを恥ずかしげもなく日本の心を振るわせるために。

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【 初出:2012/08/31−Pixiv『 140字SSまとめログ―06 』より 】