●嫌ですっ! と言いながら腰が逃げてゆく日本を捕まえ、プロイセンは問答無用ででろりと出されたやや冷たい液体を彼の体に塗りつけてゆく。プロイセンの固く節くれた男らしい指先と大きな掌がその液体を日本の素肌に馴染むように塗りこんでゆく。こそばゆい、もどかしいと思う感覚だけを与え続けて。
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●不機嫌な顔を隠さずにプロイセンは己の手で髪の毛をかき上げ、空を睨む。珍しく軍隊の教官として任務にあたりつい先ほど仕事を終えたばかりだ。実戦も交えたため暑さのあまり上着を脱いでいたのも災いした。その状態で急な豪雨に振られたのだ。溢れ落ちたため息は熱を帯び、どう発散するか思案して。
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●布団の上であぐらをかいていたプロイセンは障子が動き、湯上りの日本を見た瞬間、嬉しそうに目を細め柔らかな表情を湛えたまま手を差し伸べた。その掌に日本は己の指先をそっと乗せながら珍しくふふりと笑う。このところの日本の激務を考慮してかただ抱き合って寝たいと言ってくれた恋人が愛しくて。
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●茹だるような暑さに浴衣をはだけさせながらプロイセンは気だるげに目を伏せながらため息をつく。火照り、朱に染まる素肌を滑り落ちてゆく汗に日本は目を奪われた。無意識だからこそ絶大な効果を放つプロイセンの色気に日本は知らず知らずに捉えられ己自身に燻る火種を見つけてしまい困惑してしまう。
●なぁ――そう言いながらプロイセンはただ日本をじっと見つめ始めた。決して逸らされることなく見続けられる視線はやけに熱く、じわりじわりと日本を侵食してゆく。心を捉え、体の中で燻る火種を煽るように。赤い舌がぺろりとプロセイン自身の唇を舐めた瞬間日本は悟った。逃げれるはずもないのだと。
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●そろりと足音を忍ばせて日本は寝ているプロイセンの側にしゃがみこむ。規則正しい寝息を立てる相手に安堵しながらどうか気が付かれませんように、と願い日本はプロイセンの左手の指先に唇を寄せた。一瞬にすら満たない触れ合いに、日本の心は大きな音を立てて騒ぎ出す。触れた唇だけがやけに熱くて。
●慌ただしく障子が閉められ気配が遠ざかってから数分。プロイセンはごろりと障子に背を向け手で己の顔を覆い隠す。爺めっ――なんて悪態をついても顔が赤らむのは止まらない。狸寝入りをして驚かせようと思っていた相手に逆に驚かされ、プロイセンは八つ当たりも兼ねてどう仕返しするか思案し始めた。
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●月見窓から見えるまん丸い月に目が奪われている日本を見て、プロイセンはあらわになった喉仏に下から喰らいつく。べろりとわざとらしく舐め、なぁ――と低い声で囁けば顔を真っ赤に染めた日本が居てプロイセンはほ
くそ笑む。下から覗き込むように見上げ少し拗ねた表情をしながらなぁ、とねだって。
●二人を繋いでいた銀色の糸がぷつりと切れたあと、プロイセンはおもむろに日本の手を持ち上げ自分の口の中に指を入れた。薬指をぴちゃりぴちゃりを音を立てながら舐めていけば日本は目を伏せ、体をふるりと振るわせた。指と指との間に舌を這わしちゅうっと吸い付く。どうする……と、意地悪く聞いて。
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●夜が開け始める。白々しくなり始めた東の空に日が昇り始め、凛と冷えた空気が温められる。プロイセンと日本は共に並びながらなにか喋る訳でも視線を合わせる訳でもなくただそこに居た。夜が完全に明けてしまえば戦闘が始まる。しかし、もう二人に言葉はいらない。必要なのは共に歩む未来だけだから。
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【 初出:2012/08/31−Pixiv『 140字SSまとめログ―07 』より 】