●満ちた月が浮かれ、夜をいつも以上に明るくした。月見窓から差し込む光はいつもり明るく、眠りにつくすべらかな日本の素肌を淡く浮き立たせる。日本人にしては白い部類に入る恋人の素肌に見入りながらプロイセンは一人穏やかに笑む。愛するものとの触れ合いに身も心も満たされたこの時が愛おしくて。
●うつ伏せたまま少し丸まりながら眠る日本の背中へプロイセンはそっと口付ける。無茶をさせてしまったときは心臓が配された背中へ口付けたくなる。無理をさせたことへの懺悔と、身も心も満たされたことへの感謝の気持ちを込めてプロイセンは一人、日本へと儀式めいた口付けを施してゆく。今宵もまた。
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●緩く、緩く解かれた体は咲き誇る花のように色味を増し艶やかに咲き誇る。ただ一人が手折ることの出来る唯一の花となりながら時に手折るすべを持つ相手へ可憐に、または妖艶に微笑みながら。愛情と言う名の見えないものを糧に今宵もまた花は咲き、香りで誘う。捕らわれたのは咲く花か手折り人か――。
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●咄嗟に逃げようとした菊の手首を掴み、壁に押し付けるように立たせた。止めて下さい、と涙声すら含んだ菊の声を聞き猛る己自身に内心苦笑いしながらギルベルトの手はよどみなく菊の服のボタンを外しするりと中へ入り込む。素肌を撫で耳を食みながら――喰いてぇと囁けばせめてベットで、と返された。
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●二人で気兼ねなく眠れるようにと購入したキングサイズのベットに菊を下ろしながら艶めいてギルベルトを誘うように開かれた唇に喰らいつく。呼吸すら奪うように荒々しく、手は菊の後頭部をがっちりと固定して逃さぬように。ギルベルトの胸板を菊が力なく叩いても口付けは終わること無く更に深まった。
●苦しい、気持ちいい。その2つの感情の狭間に身を委ねながら菊はギルベルトのシャツを掴む。懸命に溺れまいと握りしめた指先が赤く色付くほど。塞がれ続けていた唇が離され、新鮮な空気を深く吸い込んだ菊は咳き込み、涙を零す。手加減して下さいとあれほど言ってたじゃないですか――と涙目のまま。
●発情しきったそれも飢えた雄の表情を浮かべたギルベルトは容赦なく言った。プロジェクトが終わるまで大人しく待ってた恋人にそれはねぇよなぁ? にたりと笑むギルベルトは素早く菊の体をベットへと押し付け、ネクタイで手首を縛り自由を奪う。ぺろりと舌なめずりする姿は妖艶で危うい色香を放った。
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●お風呂場という密室の空間では否が応にも音は響く。それが分かっていてプロイセンは日本を攻め続けるし、日本は声を漏らすまいと懸命に己の手で口を塞ぐ。プロイセンの声といやらしく風呂場に響く水音。そして自身が発する声が更に劣情を募らせ、身も心も熱く滾らせ喘がせる。零れた涙は床に落ちて。
●深く入り込まれたプロイセンの熱さに日本は身が焼けるかのような感覚に陥った。暑くて、熱くて――それこそ身も心もでろりと溶かされプロイセンの良いように扱われてしまいそうで日本は鳴いた。いつもよりもより深く快楽の海に溺れる日本を見ながらプロイセンは嬉しそうに笑み、更に彼を責め立てる。
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●自宅で飲む酒は思いの外日本を酔わせた。気兼ねなく飲める気安さと、一緒に飲んでいる相手が恋人であるプロイセンだからだろう。満ちた月を愛でながら喉を潤した酒は数知れず。ふわふわとした感覚に見を委ね、慣れ親しんだ匂いの元へと縋る。月光に照らしだされた愛おしい恋人の唇を奪い愛を囁いて。
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【 初出:2012/07/28−Pixiv『 140字SSまとめログ―05 』より 】