●彼は取材先の道場で一際異才を放っていた。周りが日本人だらけだったというのもあるかもしれない。白髪に近い銀髪、紅い目の彼は纏う空気すら他の人達と違いすぎていたのだから。戦場に身を置くものだけが背負う鬼気迫る迫力に菊は己の全てで彼を捉えようと釘付けになった。名すらまだ知らない彼に。
――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――
●傷をつけないようにと配慮された手首は赤い皮の手枷によってベットへと縛られている。日本の眼は先程までプロイセンが身に着けていたネクタイでいともたやすく閉ざされてしまった。視覚を閉ざされたことにより聴覚が鋭くなり、些細な音さえも日本は拾うようになった。そのたびにびくりと体が揺れる。
●プロイセンは目を細め楽しそうに笑みながら日本へと触れてゆく。いつものように――ではなく気まぐれに場所を変えながらそれでも優しく。最初、プロイセンは声すら出さなかった。ふわりと日本の頬を触れたとき、明らかに彼自身の緊張がとけたのに気が付きほくそ笑む。どうやら匂いで分かったようだ。
●そんな日本に対しプロイセンは愉快そうに喉で笑った。そしてそのまま指先を日本の素肌へと滑らせてゆく。まるで漏れ初めてゆく声で曲を奏でるかのように強弱をつけ、緩く柔く。次第に赤みを帯びてきた日本は与えられる些細な感覚ですら快楽を得てゆく。プロイセンの思惑通りに事が運び笑みが深まる。
●花が咲き綻ぶように、日本もまた熱を帯びて押し留めることが出来なくなってきた声に甘さが宿る。首を振り喘ぎながら懸命に懇願しようとする様にプロイセンは一人暗闇の中でほくそ笑んだ。いやらしい体になったな――と囁けば日本の体がびくりと強く反応を示す。下着を汚すシミの部分を指先で弄んで。
●絹で作られた下着の肌触りは良く、プロイセンは躊躇することなくゆるゆると手を上下に動かし始めた。ときおりシミが作られた場所を指先で弄れば面白いように日本の体から反応が返ってくる。けれどプロイセンは日本へ強い刺激は与えなかった。ただ優しく緩やかな刺激を指先を扱く手だけで与え続けた。
――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――
●浅く呼吸が続く火照った体に冷たいローションを垂らされ菊はひゅっと鳴きながら体を震わせた。既に二度菊はギルベルトの手によって達している。既に過敏になっている菊の体にボトルから冷たいままローションを垂らされれば否が応にも反応してしまう。逃げようと体をひねればあっさりと組み敷かれた。
●俺様が逃すと思うのか――そういってギルベルトは組み敷き捉えた菊の項に舌を這わした。空になったボトルを投げ捨て、ギルベルトは菊の背中に垂らされたローションを掌と指先を使って肌になじませてゆく。ゆるく、ゆるく触れるように弱い刺激だけを与え続けられた菊は仰け反ったまま喘ぎ鳴かされた。
――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――
●顔を赤らめた菊はその場から慌てて立ち去った。恋人の気配が遠ざかってからギルベルトは起き上がる。片膝を立たせたまま手で口元覆いながらも顔は先程の菊同様赤い。寝ていたギルベルトに菊から口付けたのだ。それも愛の囁き付きで。本人が熟睡していると思っての行為に嬉しさで顔がにやけてしまう。
――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――
頂きお題 『壁ドン』
●さっと顔を赤らめた日本を逃がさないとばかりにプロイセンは壁際に追い詰め勢い良く両の掌で壁を力強く叩いた。腰を曲げ、俯く日本の顔を下から見上げるながらただ一言プロイセンは告げた。――逃げるな、と。顔を歪め今にも泣きそうな日本を見てプロイセンは表情を和らげ、溢れる涙を唇で拭い取る。
――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――
【 初出:2012/07/28−Pixiv『 140字SSまとめログ―04 』より 】