表側からは見えない裏庭にある木に寄りかかりながらプロイセンはうたた寝に興じていた。
暖かな日差しが心地よい陽だまりを生み出し、木陰が程よい暗さをプロイセンに与えてくれていたからだ。
木々の触れ合う音や小鳥が鳴く声がより一層プロイセンに安心を与えてくれるから。
長く、戦場に身を投じていたプロイセンは未だに人の気配に敏い部分がある。
習慣を通り越して無意識下にて気がついてしまう癖を本人であるプロイセンは抜けきらねぇなぁと苦笑いしながら呟いていたことがある。誰も居ない空間に向かって。
意識が覚醒することなく、昔の己では考えられないくらいのんびりと平和な時間が過ぎてゆく。
うつらうつらしていた意識は完全に熟睡モードへと切り替わり、寄りかかっていた木からずりずりと横に倒れ、木の根を枕にする形で落ち着いたのかそのまま寝入ってしまう。
――幸せ、と言うならば、いまプロイセンが過ごしている時間も幸せの括りに入るだろう。
眠り続けるプロイセンの表情には笑みが浮かび、綻んでいるのだから。
夢を見た。
惚れた相手の膝枕で寝ながら髪をすき、頭を撫でて貰う夢を。
そして柔らかな眼差しを向けられながら名を呼ばれる夢を。
想いを伝える気すら無いというのにプロイセンの感情は無意識に願ってしまう。
触れたいという欲求を、伝えては駄目だといつも飲み込む言葉を夢の中だけだから、と……。
「……気が付いたら惚れてた。他の誰でもない、お前だけが欲しくてたまんねぇ」
締め付けられる胸の痛みに目を開ければ顔を赤らめた日本が居た。
それもプロイセンの左手がしっかりと日本の腕を掴んだまま。
「――き、く?」
寝起きだったこともあってプロイセンは失態を犯す。
決して口にしないと、夢の中だけでいいと頑なに言葉にしなかった日本の名を言ってしまう。
「えっ。あ、なんで爺がここにっ!?」
発した言葉のあとにやっと覚醒したプロイセンはがばりと勢い良く半身を起こした。
熱を帯び始めた顔を隠す暇すら無く、耳まで赤いことをプロイセンは自覚しながら。
「……会議のあとドイツさんとイタリア君にお呼ばれされまして」
昨日プロイセンの弟であるドイツがクーヘンを数種類焼いていたことを思い出し、だからか……と独り言を呟く。
すっかり首筋まで赤くしたプロイセンは日本が困っていることに気が付かなかった。
未だ、プロイセンの手は日本を離すまいとしっかりと手首を握りしめたままだから。
そして、夢の中で名前付きで告白していたことに――まだプロイセンは気がついていない。
――― END ―――
【 初出:2012/10/10−TwitLonger『 向き合う矢印 』より 】