口付け22箇所―前半



→『口付け22箇所/髪:思慕』
●それは不意に訪れプロイセンの心を掻き乱した。己を象徴する旗に描かれた鷲のような黒い髪に触れてみたい、口付けてみたいと強く、深く。間違えようがないくらい、心に思いが浸透した頃、さすがのプロイセンも自覚した。この気持の意味がなんであるかを。けれど同時に決意する。――言葉にしないと。

→『口付け22箇所/額:祝福、友情』
●スキンシップの習慣がない日本に対し、辛抱強く決して焦らずに対応してきたのが功を奏したらしくプロイセンから与えられるスキンシップに過剰反応を示さなくなった。からかえない事に少々の不満を感じながら今日もプロイセンは日本の額に口付ける。祝福の言葉を送りながら、己に言い聞かせるように。

→『口付け22箇所/瞼:憧憬』
●馬鹿なことだと分かっていてもプロイセンは一度だけ考えたことがあった。季節に富んだ国に住まうからこそ綺麗なものや美しいものを自然と見分ける能力を持つ日本の目と、自分の血のような赤い目は同じ物を見ても別のように見えているのではないか、と。その部位に触れた唇の感触は今でも思い出せて。

→『口付け22箇所/耳:誘惑』
●いつものように二人で買い物を済ませた帰り道。人気の無い通りに差し掛かればふわりと二人の頬を優しい風が撫でていった。その風が気持ちよかったのか日本は目を伏せてはにかんだ。触れた指先に力を込め、プロイセンは小さな音を立てて耳へと口付けた。紅い目に宿された意味を思い知るまであと少し。

→『口付け22箇所/鼻梁:愛玩』
●いつものように飄々とした表情を浮かべていたプロイセンは日本の一言で表情が変わった。己の失言に気が付いた日本はよろけ壁に寄りかかる。真摯な表情を湛えたままのプロイセンの腕と壁で日本を閉じ込め、顔を傾けた。がぶり、ぺろり、ちゅっの音の順で噛み付いて舐め付いて口付けてニヤリと笑って。

→『口付け22箇所/頬:親愛、厚意、満足感』
●日本の隙をついて頬に口付けるのがプロイセンの中でマイブームになっている。師匠と弟子だった過去はいいところ友人か知人程度か。それでも気兼ねなく触れることの出来る場所が頬であり、日本自身も嫌がることなく受け入れてくれるの。だから少しだけ意地悪をしてみた。唇ぎりぎりの場所へ口付けて。

→『口付け22箇所/唇:愛情』
●言わないと決めていたにも関わらず日本のうっかりミスで相手の気持ちを知り、躊躇せずに思いを告げた。触れることを許され、溢れてくる感情のままプロイセンは日本に口付けた。満たされてゆく心にどれだけ自分が日本を欲していたのか、零れ落ちてゆく涙が如実に知らしめた。もう一度日本へ口付けて。

→『口付け22箇所/喉:欲求』
●立っているときはあまり見えない場所も座れば自然とプロイセンの目に留まる。やけに美味しそうに見えたその場所に噛み付き舐めて吸い付けばどんな顔をしてくれるだろうか、とくすぶっている感情を持て余しながらプロイセンはどう仕掛けようか思考を巡らせた。相手が同じことを思ってるとも知らずに。

→『口付け22箇所/首筋:執着』
●プロイセンは中腰だった日本の腰に腕を回し胡座を書いていた自分の膝の腕に捉える。ジタバタと抵抗する日本に対し笑みを深くしながらプロイセンはわざと音を立てながら首筋に口付けた。襟足から項にかけてゆっくりと。見る間に体ごと赤くなった日本に気を良くしたプロイセンは紅い花を一つ咲かせた。

→『口付け22箇所/背中:確認』
●久しぶりの逢瀬だったこともありプロイセンの箍が外れた。貪り尽くし気絶させてしまった日本の背中には無数の紅い花が咲き乱れ、行為の激しさを物語っていた。その花の一つ一つを指先で確認しながらプロイセンは穏やかな笑みを浮かべた。朝になれば小言を食らうのを覚悟しながら愛おしそうに触れて。

→『口付け22箇所/胸:所有』
●綺麗に合わせられた着物の隙間にするりと手を差し入れ、あらわになった胸元にプロイセンは唇を寄せた。軽く音を立て幾度と無く。くすぐったいのか恥ずかしいのか、どちらにせよ身を捩り逃げようとする日本を逃がすまいとプロイセンは抱き寄せ、そのまま心臓の真上にきつく吸い付き紅い花を散らした。

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【 初出:2012/06/28−Pixiv『 口付け22箇所―前半 』より 】