140字SSりくえすと編―01



●賭けに負けた日本はプロイセンから手渡された物を持って隣の部屋へと移動した。潔く白い箱を開けて見れば上品な薄紫色した布地のものが見えた。おや、と思いながらそれを手にした瞬間日本は驚愕の表情を浮かべ真っ赤になった。着なければいけないのはわかっているが直視したくなくてつい視線が泳ぐ。

●唸りたい気持ちをぐっと堪え、日本は白い箱の中身を取り出し中身を確認した。ブラにショーツにガーターベルト。そしてこれはたしかベビードールだったか。女性用の下着一式を前に日本はどうしてこうなった、とつい呟いてしまう。賭けの前に箱の中身を確認しておけば、と思っても後の祭りでしかない。

●二次元の嫁である彼女らのために鍛えた知識をこんなところで使うはめになろうとは――爺のライフはもうゼロです。そんな言葉を言いながらそれでもしっかりと下着一式を身に付けた日本はため息を零す。このあとプロイセンにこの姿を見せなければならないのが億劫でならないし、恥ずかしすぎて死ねる。

●はぁ、ともう一度ため息をつけば「似合ってんじゃん」と非情な声が日本の耳に届いた。声を聞いた日本は慌てて振り向けばにやにやと笑うプロイセンが居た。いつからだかは分からない。けれど見られた――と自覚した瞬間、日本の体も心も熱を帯び始め形を成し初めてゆく。羞恥が快楽へと切り替わって。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●あまりの暑さにネクタイを解きワイシャツのボタンを外す。滴り落ちる汗がうっとおしく感じながらタオルで吹けば新たに汗が吹き出す。あちぃ〜とギルベルトはダルそうに言った。しかし菊の目は棒アイスを齧るたびに動き続ける彼の喉仏に釘付けになっていた。ただ、ただ舐めてみたいと衝動にかられた。

●暑い最中でも涼し気な表情を湛える菊を盗み見ながらギルベルトは内に巣食う感情を抑えるのに必死だった。触れるだけなら友達の範囲内だろう。けれど触れるだけでは物足りないと既に自覚している。指で触れてなぞって唇をはわして。それ以上のことも願ってしまう。ただ気持ちがはやり焦燥感が増して。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●日本はゲームを、プロイセンは読書を。それぞれ好きなことをしながら時間を過ごしていた。そんなおり、ふと日本がゲームを止めてページを捲るプロイセンの手にそろりと触れた。ただなんとなく。なんとなく触れてみたいと思ったまま日本は行動に移した。白く節くれた彼の指を己の指先でなぞりながら。

●撫でられたり触れられたりしているのだと思うと急にこの手が愛おしくなって日本は唇を寄せた。手の甲、指先、そして掌へと。されるがままだったプロイセンは満足気に笑った日本の腰に腕を回しそのまま引っこ抜くように己の足の間に座らせて抱きしめた。爺お前なぁ、と言いながらそれでも嬉しそうに。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●潤みきった黒目がちな目と色艶を増して薄く開かれた唇はどうみても誘っているようにしか見えなかった。しかし実際にはただの酔っ払いでしかなくプロイセンは困惑する。するりと擦り寄ってくる様は猫のように愛らしく、ふふりと笑む様は無駄に色気満載でプロイセンは否が応にも理性と戦うはめになる。

●気持よく酔った恋人をこのままもう少し見ていたいという思いが勝り、プロイセンは日本の名を紡いだ。行儀悪くあぐらをかいたまま片膝を立たせた体勢のまま、ここに来いと太ももを叩けば意を汲んだ日本がするりとその場に収まる。まるで誂えたかのようにちょうど良く。笑む恋人の頭を撫でて口付けた。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――


【 初出:2012/09/02−Pixiv『 140字SSりくえすと編―01 』より 】
【 文章リクエスト受付ったー(http://shindanmaker.com/49500)さんの診断結果参照 】