140字SSまとめログ



●だったら――。わざとだったら爺、テメーはどうすんだよ? 赤い瞳は目を細められ、更に色味が増す。猩々緋色のように濃く鮮やかに。そして捉えた獲物を逃さないとばかりにきつく日本を睨みつけた。床とプロイセンとの間に作り出された檻に囚われたまま、日本は今されたばかりの事で頭が一杯だった。

●寝ぼけたまま抱き寄せられ抱き枕代わりにされるのはままあったこと。だからこそ日本はまたですか――と思いながらも逆らうこと無く腕の中に身を寄せた。取り立て用事があるわけでもないし……と己に言い聞かせて。なのに、だ。気がつけばぼんやりと開かれた目があった瞬間、彼から唇を奪われたのだ。

●触れるだけの、だったソレが彼の名を呼ぼうとした瞬間ぬるりとしたものが日本の口の中に入り込み、舌を絡めとられぎゅっと体を抱きしめられた。その時になって初めて日本は彼に謀られたと気がついたのだ。深く、深くもっと寄越せとばかりに口付けられた。呼気すら奪われ、抗うことすら出来ぬままに。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●縁側で胡座をかきながら庭先で遊ぶぽちくんを見つめるプロイセンに気付かれないよう日本はそっと近づく。けれど、伸ばそうとした手が相手へ触れそうな距離まで近づいた瞬間日本の視界は急転させられた。にやりと笑むプロイセンが日本の視界を独占して。不意に見つめる視線が緩み日本は唇を盗まれた。

●プロイセンの右手は床につき、己の体重を支えたまま左手は日本を撫でてゆく。さらりとした黒髪を、形の良い耳を、顔の輪郭を。そして頬に手を添えながらそれでもプロイセンは日本を離すまいと唇を盗んだままだ。ぬるりと口腔内に侵入してきた舌の感触と日本、と吐息混じりの囁きに顔も体も熱くなる。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●濃紺色の布に白い太めの糸で縫われた甚平を身に付けたプロイセンは暑そうにぼんやりと外を眺めている。しっかりと日本の右手を己の左手で絡めとったまま。はだけて見えるプロイセンの素肌は人種特有の白さを露呈させ日本が直視しずらい情況を作り上げていた。鍛えぬかれた彼の素肌を汗が流れて――。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●台風一過の翌朝。着慣れた甚平を身にまといプロイセンは一人庭先に降りた。目がさめるような青空にプロイセンは目を細め吹く風に身を委ねた。昨晩の雨の名残か色を増した濃い草木が太陽の光を反射してきらきらと輝きプロイセンの目を楽しませ、穏やかな笑みが浮かぶ。近づく恋人の気配に心踊らせて。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●力を抜いて深呼吸をしろ、と何度言い聞かせてもプロイセンの指先が素肌をなぞるたびに日本の体は小刻みに動き時には跳ねて力んでしまう。慣れないのだと言われてしまえばそれまでだがかと言って手加減をすれば逆に行為そのものに意味は無い。羞恥に赤く染まった体に触れながら意地の悪い笑みを一つ。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――

●日本はめぷるぷると震えながら胡座をかいているプロイセンの肩に手を置いたまま動けなくなってしまった。売り言葉に買い言葉ではないけれど、うっかりプロイセンの挑発とも我儘ともとれる内容に男に二言はありません! と宣言したことを既に公開し始めていた。顔だけでなく全身すら赤く身を染めて。

●立膝をつき、日本はプロイセンの顔を見下ろしながら懸命に目的を果たそうと努力をする。が、一向にその距離は縮まらずプロイセンは少ししょぼくれた顔をし始める。その表情に意を決したのか日本は彼のおでこに触れるだけの口付けを一つ施した。閉じた目をそろりと開ければ満面の笑みを浮かべた彼が。

   ――― ※ ――― ※ ――― ※ ―――


【 初出:2012/06/24−Pixiv『 140字SSまとめログ 』より 】