140字SSまとめログ―未アップ編



●大きな月に誘われるかのように散歩に出た。夜空を見上げ愛でながら。ひらり、と視界の隅でなにかが動きふと気になって向けば男がこちらをみてニヤリと笑った。マントをひるがえしながら男は無音で近づき、菊を抱きしめる。名を紡がれる前に唇を盗み、ただ愛おしそうに言葉を放つ。逢いたかった、と。

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●猛りきった菊自身のソレは血管を浮き立たせながら小刻みに震えていた。恋人であるギルベルト指先が硬くなっているものを指先でなぞり続けていた。上から下へ、下から上へ軽く触れる程度に。スーツ姿のままギルベルトは菊に囁く。最後通告とも言える言葉の中に甘ったるくも逃れられない罠を仕掛けて。

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●男は黒いロングコートをなびかせながら両手をポケットに入れたまま街のゴロツキどもをあしらう。殴りかかってくるその拳を足先で蹴り上げ、鈍い音を響かせる。軽快なステップを踏みながら踊るかのように男は別の男に回し蹴りを横腹に食らわせ、トドメと計りに足を高く持ち上げ一気に踵を振り下ろす。

●あ、折れたな――ゴロツキどもに痛めつけられていた菊は瞬時に理解した。同時に躊躇なく相手の骨を、それも的確にばっきりと折った男を見ながら菊はうっかりときめいてしまった。魅入り、助けてくれた男に手を差し伸べられ男の紅い目を見た瞬間、菊は心を捉えられてしまった。強く強く貪欲なまでに。

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●触れることを嫌がった恋人の手を見てプロイセンは絶句しそして静かに怒りを湛えながら笑みを浮かべた。逃れられないことを悟った日本は素直に謝罪の言葉を口にする。くしゃりと日本の髪の毛を撫でたプロイセンは上着のポケットから丸く小さな薬缶を取り出し時間を欠けて丁寧にクリームを塗り込めた。

●真面目な表情を湛えながらそれでもほんの少し、日本だからこそ気がついた悲しそうな表情に気がついてしまい、項垂れた。忙しさにかまめてケアを怠ったのは事実なのだから。けれど指先から手首へとゆっくりと丁寧にマッサージを施され、日本は次第に居心地の悪さを感じ始めた。気持良すぎるがために。

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反省の形すら見せない相手を見据えながら、拭った血をぺろりと舐めればなに舐めてるんですか! と怒られた。美味そうだったからつい。なんて答えを返せば馬鹿じゃないですか、貴方と辛辣な言葉を送られつい顔を顰めてしまう。

顔を背けた男は気が付かない。目の前にいる男の目が妖しい光を帯び始めたことに。そして刀を持つ手を掴み引き寄せ、唇を貪る。反論させる隙すら与えず、逃さないとばかりに抱き寄せる腕に力を込めながら、口腔内を侵してゆく。

絡み合う舌はまるで別の生き物のように時には逃げ、追い込み、互いを喰らいあう。貪る、という言葉がどこまでも似合う口付けが終わった後、二人は何事もなかったかのように歩き出す。示し合わせたかのように自然な仕草のまま。

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カメラを手に戻れば更に白い毛玉が一つ増えていた。ギルベルトの太ももに顎を乗せるようにまるまり、すっかりぽちくんはリラックスしていた。柔らかな優しい眼差しを浮かべながらギルベルトはぽちくんを撫でる。寝ている二匹の毛玉を動かさないように。ただただ優しく愛おしそうに。その姿を一瞬も見逃さないとばかりに写真を撮り続けた。

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【 初出:2012/10/30〜2013/01/27−Twitter&othersより 】