●ギルベルトは切れた唇から流れた血を親指で拭いながら笑った。彼の紅色の瞳は細められ、獲物を見つけた肉食獣のように鋭くぎらぎらとした輝きを放ちながら敵を睨みつける。跪きながら己の背で虐げられていた動物を守りながら屈すること無く。殺気混じりの怒気を纏いながら視線だけで相手を威圧した。
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●音もなく男は剣を引き抜く。長身の剣を片手で持ちながら紅の眼を楽しそうに顔を歪ませ男は無造作に魔獣と呼ばれる獣へと近づいた。すっ――と目を細めた瞬間、男は大地を蹴り魔獣の横をすり抜け剣を鞘へと収めた。大きな爪を振りかぶったまま魔獣の体は斜めにずれ落ち、断末魔すら上げずに絶命した。
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●夜に紛れて音が鳴った。リン――と高く澄んだ音がどこからともなく鳴り始め、追いかけるかのようにシャランと金属の音が鳴り響く。なにもなかったはずの暗闇に炎が掲げられ、黒い布で目隠しされた黒髪の子が踊りだす。長い裾をはためかさせ、錫杖と鈴の音を響かせながらまるで歌をうたうかのように。
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●本来ならば両手で扱う長剣を白銀色の髪の男はいともたやすく片手で扱う。笑みを口元に浮かべながら水を得た魚のように生き生きとした表情のまま男は軽やかに剣を持ち、舞を踊るかのように敵をさばいてゆく。自ら地に描いた線から動かず、男の背後に居る黒髪の青年になりかけの少年を守り続けながら。
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●写真を眺めながら微笑んだことに気が付いたプロイセンは日本が手に持つ写真をひったくり、彼の手が届かないように空へと掲げながら写真を見上げ、二の句が継げなくなる。夏の夕暮れ時、着せられた浴衣が少しはだけたままのプロイセンは穏やかに笑みながら恋人の名を告げた瞬間を写真に切り取られて。
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●むにゃりと寝ている日本が唇を動かす。なにか食べてる夢を見ているのかもごもごと動く様はどこか可笑しくて、そして愛らしくてたまらない。プロイセンはそんな日本の耳元で己の名を囁いてみた。ちょっとした悪戯心で。頬を染めプロイセン君と頬を頬を染め照れながら言う恋人を見て不覚にも赤面した。
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●日本独自の建築物を見る度に、プロイセンはシャッターを切っていた。そんな写真の中に見つけたものがある。柔らかく微笑みながら愛しい者を見つめる眼差しを浮かべプロイセンを見ている写真が。ちょうどその瞬間がプロイセンが撮っていた建物の窓に写り込んでいた。プロイセンの口元に笑みが零れて。
●居ても立っても居られなくなったプロイセンは日本へとメールを送った。「逢いに行く」と書かれただけのシンプルなメールを。そして直ぐ様身支度を整え、最短ルートで飛行機へと乗り込んだ。機内で携帯の電源を入れてみれば「待っていますから」の返事がありプロイセンは知らず知らずの内に微笑んで。
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●プロイセンを背もたれにしながら日本は二人仲良く炬燵に入りながらまったりとした時間を過ごしていた。珍しく日本が蜜柑をむいてください、とねだるので言われるままにプロイセンは行動に移す。白い筋もしっかりとって食べさせれば嬉しいのか日本の頭がぐりぐりとプロイセンの顎先に押し付けられて。
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●なんとなく呼ばれた気がしてん? と横を見ればふわりと柔らかな笑みを浮かべた恋人が居た。さっき呼んだんですよ。心のなかでプロイセン君、と。穏やかな笑みを見せられたプロイセンは恥ずかしいヤツ、と言い切りそっぽを向いてしまう。耳や首筋が赤くなってゆくのを感じながら手で己の顔を隠して。
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【 初出:2012/09/26〜2012/10/11−Twitterより 】